先日プラハで5月末からプラハで開催されているロングランのイジー・トルンカ展に行ってきました。イジー・トルンカはバーボフカでも開店当時から取り扱っている絵本のイラストレーターですが、アニメ・人形作家としても国内外で高い評価を受けている言わずもがなのチェコの巨匠です。ポスターを見るだけでワクワクしてきます。
会場は3階建、今日は結構時間かかりそうだなというのが第一印象。:)
一番最初に展示されているのは1940年代の『小人の引越し』(仮題)というタイトルの作品。若干30歳にしてこの完成度。それぞれの小人の動きや表情が楽しくて、最初の一枚目にして大幅に時間を費やす「危ない」展示。ww
こちらはトルンカの中ではちょっと珍しい油絵。自画像や家族のポートレイト。なるほどと、巨匠の素養の深さや安定感を改めて再認識。このベースがあるからこそ、高く飛べる自由と体力が獲得できるわけだと勝手に納得。右上に実験的な自画像があるのもまた納得。試行錯誤がそのままマスターピースになってしまうような、めくるめく才能を感じます。
続く油絵作品。「劇場モチーフ・俳優たち」と「俳優」という名の2枚。ふかふかしたぶ厚い布団に似た包容力を感じる情緒豊かな作品。(ちょっと意味不明でごめんなさい。)
ここで改めてみんなのよく知る我らが巨匠!写真!勝新太郎を彷彿とさせる存在感と色気!
と思いきや、これは貴重な若干20代の貴重な写真。巨匠めっちゃハンサムじゃん❤️!!(そしておしゃれ!)
(髪型は若い頃からずっと一緒なのねとか内なるコメントが自分でうるさい私。)
今回改めて来てよかったと思ったのは巨匠のパペット以外の造形作品。オリジナルな詩情溢れるしっとりとした塑像作品の数々に私以外のチェコ人も腰をかがめて見入っていました。
物憂げな王様と、小さなお馬に乗った王子の塑像。そこだけ永遠の時間が流れているような異次元空間が広がっているような雰囲気のある作品。
こちらは四季シリーズの『春』
こちらは『秋』
階段を上がって待っていたのは、絵本のイラストレーションの原画作品群。こちらはコレクターズアイテムにもなっている貴重な『赤ずきんちゃん』原画。ちなみに、3D構造でお人形で遊べる仕組みだったため、市場では良い状態で残っているのが大変珍しい絵本です。
バーボフカでもおなじみ『DVAKRAT SEDM POHADEK(7X2のおはなし)』年少さん用に可愛らしいイラストが満載の私も大好きな一冊です。
アニメーション作品とともに人気の「ふしぎな庭」。日本でも刊行された世界的に有名な一冊。ふわふわとした楽しく可愛らしい描画の中に、作品に対する妥協を許さないトルンカの厳しい姿勢が感じられます。「すごい・・」の一言。
ただのコンポートなのに、なんだこの可愛さは!?
階、もう一つ上がって人形コーナー。アニメ作品でもお馴染みのキャラクターたちが勢揃いです。
人形アニメの『シュパリーチェク』面々。衣装も表情もとっても素敵。それぞれが動き出しそうな感じがしてきます。
他にもたくさんのイラストやお人形が展示されていましたが、本日はここまで。
そのほか今回の展示用にまとめられたドキュメンタリー映画もあり、子供の頃からの逸話など知れて、とっても勉強になりました。勉強はあまりできなかったけど、家の地下に大きなシアターを作り上げてしまった子供時代のトルンカ。程なくしてお父さんにばれて、怒られてシアターごと薪として燃やされてしまったとか。溢れる才能は隠しても抑圧しても、とにかく無駄ってことです。
簡単なパソコン編集のインスタント・アニメを見ている昨今の子供たちもに、熱量の比較できないチェコの巨匠たちの手作りアニメをもう一度見てほしいと思った展覧会でしたが、来館者はほぼ私と同じ世代かそれよりもずっと年配の世代がほとんどでした。トルンカの世界は意外と大人向けなのかもしれません。
私は幸い2回も足を運ぶことができました。チェコにいる幸せを噛み締めた一日でした。