毎年恒例年明けパレード
2022年2月9日 水曜日

(↑こちらの写真はバーボフカ息子の初のドキュメンタリー写真です。)

本日はかなりチェコな議題。日本の方にはなかなか説明の難しいテーマになるかもしれませんが、私たちが毎年参加している平和のためのパレードについてのブログです。
(というか私自身にとって難しいので気軽にお読みください!)

このパレードはペトル・プラツァークが毎年主催している王政復古のパレードです。

まずこの人物、作家、活動家、詩人ペトル・プラツァークと活動について。

1988年共産主義の終わる少し前、ペトル・プラツァークが先導して当時の文化人やインテリを集めて行った政治運動であり政治グループ『チェコの子供たち』は当時、体制側にもかなりのショックと驚きを持って受け止められた事件でした。反体制運動ではあるのですが、自由で公正な選挙を!とか民主主義国家を!という主張ではなく、あえて、立憲君主制を求めるマニフェストを掲げていたからです。どんな運動だったのか、そのマニフェストの一部を読むとわかりやすいのでこちらに訳します。

“我々チェコの子供たちはチェコの王国、聖ヴァーツラフが永続するものと宣言する。新しい王を迎え入れる準備をしていることをここに宣言し、それを我々の最大目的とする。恩寵の王とはすなわち、それが統治する祖国に責任を持ち、それが統治する人々に対しての責任を持つ神である!王は権力者や金持ちの下にある弱い人間の盾である!…王国は多数のために奉仕する少数からなる政府でもなく、少数のために奉仕する多数からなる政府でもない。王国は、この土地と国に寄生する数千の貪欲者、自己顕示欲の塊、徒食者や寄生虫の政府ではない。王国とは神聖なものである。…王国の政府とは人民が望み選ぶ形を実現するものである。人民が共産主義を選ぶなら、共産主義となるだけだ。我々はしかしながら、政府はいかなる政策を掲げる必要ななく、また掲げるべきでもないと確信している。政府が良いか悪いかのどちらかであるのみだ。我々はここに、現政権が娯楽文化分野を担当するか慈善団体への転向を提案する。”

 

My, české děti, vyhlašujeme, že Svatováclavská koruna, České království trvá. Připravujeme se na příchod nového krále, což je náš nejvyšší cíl. Král z boží milosti je Bohu odpovědný za svou zemi a za svůj lid! … Král je záštitou slabých proti mocným a bohatým! Království není vláda menšiny na úkor většiny či vláda většiny na úkor menšiny, království není vláda několika tisíc hrabivců, samozvanců, darmožroutů a parazitů země a národa. Království je posvátné. … Královská vláda budiž taková, jakou si zvolí lid. Jestliže si zvolí komunistickou, bude komunistická. My jsme však přesvědčeni, že vláda nemusí mít, ba nemá mít žádný politický program. Je buď dobrá, nebo špatná. Navrhujeme přechod politických stran do oblastí kulturně zábavných či mezi charitativní sdružení apod.“[4]

当時若い活動家やインテリたちでオーガナイズされた運動でしたので、半分冗談半分本気みたいなところを理解していただきたいのですが、反面、言動の自由の許されない、共産主義時代の話ですので、投獄、拘留、職を失うなどかなりのリスクを背負ってそれなりの活動をしているわけです。それにもまして注目すべきが、反体制の主要メンバーをも驚かせた「王政復古を求める」この宣言文でした。
(全文には「蟻たちに自由を!」とか大人を煙に巻くような不可解でふざけたような文章も出てきます。)

芸術活動の一環として知られるハプニングの延長とも取れるその反面、現政権を辛辣に批判する、また馬鹿にする、ある意味新しい形の政治運動として、当時、政権側と反政権の双方を驚かせました。

前置きはこの辺にして、現代に戻ります・・・。

皇帝をその上に抱くEUの前身的なオーストリア・ハンガリー帝国時代の進歩的で平等な国の形、またその以前の立憲君主制と現在の腐敗した政権を批判して、年明けに今でも続くこのパレード、政治的というよりは平和のパレードとして継続されています。

まず、ヴァーツラフ広場にある聖ヴァーツラフ像の元に集合、そこからプラハ城に向かいます。ブラスバンドも恒例の主要メンバーでマーチなどを演奏しながら行進です。

こちらのプラカードはフランツ・ヨーゼフ1世の息子、カール1世。2年だけの即位とはいえ、社会福祉などたくさんの制度を取り入れたことでも知られています。平和を愛した最後のオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝です。パレードはヴァーツラフ広場を南から北へ練り歩きます。

天文時計のもとで、オーストリア・ハンガリー帝国の国歌を歌うのがこのパレードの伝統です。うちの息子も参加ですが最年少ではありません。(笑

写真右はチェコの最重要作家の一人であるヤーヒム・トポル。「チェコの子供たち」をペトル・プラツァークとともに主導した人物です。プラカードも「チェコの子供たち」を一緒に動かした詩人で作家、通称マゴル。「喜びを忘れないで。」というスローガンが書かれています。(当時の若者によると、共産主義時代にこのスローガンは心に響くものだったそうです。)

中継地点で一回休憩!カフェ・モンマルトルで冷えた体を温めて、次はカレル橋まで向かいます。息子はいろいろな大人に声をかけてもらい。一人前の振る舞いです。

おにぎりで腹ごしらえも忘れずに・・・。

(私たちの)あこがれのヤーヒム・トポルさんとカレル橋の上で記念撮影もしてもらいました。後ろにはゴールのカレル橋が輝いています。4歳の息子にはなかなか長い道のりですので、私たちはここで終了、暖かいカフェでまた一休みとなりました。私がチェコに来てから17年。継続は力なりで直接的な政治インパクトはありませんが、共産主義時代の毎日や今の恵まれた平和な世の中をもう一度思い返す機会として、毎年一度このパレードは我が家の大事なイベントになっています。