実はここ数年、ガラライトと呼ばれる素材(日本ではカゼイン樹脂と呼ばれています。)に夢中になっています。カゼイン樹脂というのは、牛乳のタンパク質から作られるプラスチックのこと。
もともと2012年ごろ手に入れたガラライトと呼ばれるプラスチックのブローチに出会い、そこからそのカゼイン樹脂への興味が湧きました。それまではプラスチックはプラスチックという認識しかありませんでしたが、ベークライトを含め様々な種類のプラスチックが存在することを知り、特にミルク・プラスチックなんていう言葉が、私の興味をとてもそそります。
調べてみると、ガラライトのボタンはイタリアやオランダ、もちろんチェコなどヨーロッパ中で作られていたようですが、現代はチェコを含め、もうほとんど作られていないそうです。(日本ではまだ群馬県などにカゼイン樹脂のボタンを作っている工場があるようです。)
日本でも一部のボタンファンの間で人気のあるカゼインボタンですが、私のチェコ・ガラライト・ボタン・コレクションも時間をかけて少しずつ増えていきました。
なんといっても、ガラライトの表示がないと見分け方が難しいガラライト、熱湯に浸した時の柔らかい質感や匂いなど、今までに調べた方法や知識で随分見分けがつくようになりました。そして、出会ったのが現在でもボタンを製造しているチェコの大手ボタンメーカー、スティルという会社。
ひょんなことから手に入れた古いボタンカードにガラライトの表示と会社名STYL・・・さっそくコンタクトをとってみることに。STYLは工場のある地域でボタンを作り始めて今年117年、工場設立67年のとても古いチェコのボタンメーカー。
数回のやり取りを経てプラハでお会いできることに! 工場は車で2時間かかるチェスケー・ブデェヨヴィツェにほど近い場所にありますが、プラハ出張でいらっしゃっていた社長さんと従業員の綺麗なチェコ人の女性に貴重なお話を聞くことができました。彼女はボタンのデザインも手がけているということ。
写真は社長さんとガラスのデザインも手がける女性従業員。ちなみに素敵な会合場所はプラハの老舗カフェ・ルーブル。
なんと今回数枚のガラライトのボタン見本票もお土産にいただけるということ。
社長さんは1982年からこのボタン工場に勤務されている古株ですが、就職した時にはすでにガラライトのボタンが作られなくなって長い年月が経っていたと言います。
こちらがガラライトのボタン見本。ボタンもそれぞれ個性的ですが、見本票自体のデザインやフォント、手書きの文字や、会社印など一つ一つ丁寧に作られていることがわかる、素晴らしいデザインでした。あー、これこれ、この質感・・・。私が熱湯を通す匂いでのガラライトの見極め方や質感など熱く語ると、びっくりした表情で面白そうに聞いてくださいました。
美しいボタンの見本票にしばしうっとり・・・。その後私の持って行った彼らの会社名が入った古いボタンカードを差し上げたのですが、彼らは彼らでその古さとボタンの美しさに大変驚いていました。「こんな古いものをどこで手に入れたのですか!?」と聞かれましたが、それはバーボフカ店長ですので、欲しいのもは探しますよーww。そのカードは会社名から50年代のものだろうとおっしゃっていました。
原料が手に入らなくなってきたこと、また現在のプラスチックであるポリスチレンがその材料に取って代わったことなどで、その工場では70年代で終わりを告げたガゼイン樹脂の製造。製造方法も今のボタンの製造方法とは全く違うものだったそうです。
また調べていくうちに、製造方法は今のプラスチックのボタンよりもなかなか手間のかかるものだったことがわかってきました。
ガラライトをめぐる迷走はしばらく続きそうです。
取材に応じてくれたSTYLの会社に心からお礼申し上げます。
STYLホームページ:http://www.buttons.cz