今日はチェコのメタルボタンの話をしようと思います。チェコでヴィンテージボタンを集めていると、たまに古いメタルボタンに出会うことがあります。かつて国営企業だった現在のコヒノールは国外では文具メーカーとして知られていますが、裁縫道具を製造する部門もあり、目を引くヴィンテージのメタルボタンはほとんど、社会主義時代の国営企業・コヒノールで製造されたものです。フィリグリーのメタルボタンに代表されるような軽やかでレース細工を思わせるような美しいメタルボタンや花に水をやる少年をモチーフにした遊び心を感じるデザイン性の高いボタンなど、その振れ幅はさすがチェコ、こちらも中々奥深い世界です・・・。
しかしながら、チェコでのメタルボタンの歴史を紐解くとチェコスロヴァキア時代・国営企業よりもっと前、ナポレオンの時代よりもっと前・・・なんと18世紀後半にその製造が始まったという記録が残っています。さらに詳しく申し上げると1770年頃、チェコとドイツの国境地帯で最初の錫製のボタンが作られたと記録されています。そしてメタルボタン製造の場はティサー(ドイツ名Tyssa)にも普及し、現在ある北チェコにあるメタルボタンの会社Tyssaへと繋がります。
プラハ、ベルリン、パリ、そしてミラノ・・・すでに19世紀初頭には、これらの都市の至る所でティサーの装飾ボタンを見ることができたといいます。最初の工房で修行した弟子達は徐々に熟練の職人へと成長し、彼らによってチェコのボタンはヨーロッパ中に広がりました。19世紀末には、68もの小規模な工房で、800人ほどの職人がボタン製造していましたが、これらの工房の多くは家族単位で営まれました。
私と個人的なメタルボタンの出会いは上の写真のバラのフィリグリーのメタルボタンです。6年前でしょうか、7年前でしょうか・・・既に思い出せませんが、このボタンに恋をして以来、製造元であるTyssa社とのお付き合いは今でも続いています。特にカメラマンとしてTyssa社の宣材写真や製品の写真などを数回撮影させていただく機会があり、製造の様子も詳しく見学させて頂く機会に恵まれました。
ちなみにメタルボタン製造の現場はチェコの最北端、シュルクノフという街で、かつて劇場だった美しい建物の中で行われています。
日本でも長く続く伝統産業を見ると、製造の根幹部分は昔と変わらず、人の手とその技術がものづくりの基礎となっていることが多いものですが、メタルボタン製造を見てもそのプロセスは昔とほとんど変わるところがありません。机上にてまずはボタンデザインを製作し、その押し型作りから始まります。
こちらはかつての国営企業コヒノール時代に作られたデザインの設計図。
こちらはボタン用の押し型ではありませんが、このように職人さんが手作業でボタンになる錫の帯の型を抜く押し型を製作しています。熟練した技が必要なとても細かな作業です。
こちらは大変古いメタルボタンの押し型です。Tyssa社では100年以上古い型も数多く所蔵しています。
糸巻きのようになっているのは、錫の帯です。このメタルの帯へボタンのモチーフを鋳造していきます。押し型(凸型と凹型)の間に金属を差し込み、型の模様をそちらへプレスします。この作業には自動プレス機、または圧縮プレス機を使用します。細部の加工には小さな補助プレス機を使用して仕上げていきます。
こちらは鋳造して打ち抜かれたメタルボタンの上部です。押し型には必ず凸型(母型)と凹型(父型)が必要になります。
ボタンの上半分と下半分を継ぎ合わせるプレス機でパーツを合わせ、やっとメタルボタンの形が整います。ですがこの後も長い工程が待っています。
まずは脱脂を行い、次に亜鉛メッキ槽で表面処理を施します。一部のボタンは手作業で色付けや金彩を施すこともあります。またはメタルボタンは特殊な研磨剤を使って仕上げています。表面をマット加工にしたり、ざらざらした目でも手触りでも楽しめる質感に加工します。そして最後に亜鉛メッキの安定性を保ち摩耗防止のための塗り直しを行い、そこでやっと完成ということになります。
それぞれの工程で、人の手が細部をはかり、感じ、目で確認し、作業が続きます。完成したメタルボタンただ眺めるだけからは、想像も出来ないほど数多くのプロセスを経て製造されています。今回全てではありませんが、その一部を自分の目で見て撮影させて頂いて、改めて伝統としてのものづくりの奥の深さに触れた気がしました。
「チェコのメタルボタンは薄くて、中が空洞で世界一軽いんだよ。」とTyssa社の社長さんが自慢げにおっしゃった言葉を今改めて思い出します。大きくてもジャケットなどの表面にぴたりと寄り添い、重さのために下を向いたりしません。私はフィリグリーの一番大きなサイズをピアスにした物を使っていますが、ピアスも然り、重さが気にならず下を向いたりもしません。そんな、使ってみて初めて気づく良さも沢山あると確信しています。
バーボフカでは新旧のメタルボタンの販売を予定し、その準備を進めています。新しくメタルボタンというカテゴリーを作り、現在製品を撮影中ですので、まだまだ時間はかかりますが、販売開始の折にはまたメールマガジンでお知らせする予定ですので、皆様どうぞご期待ください。
Tyssa社のメタルボタンの卸売にご興味のある方もバーボフカ(日本語で対応いたします。)あるいはTyssa社(英語で対応いたします。)の方にお問い合わせ頂けますと詳しい資料をご提供いたします。
Tyssaホームページ:https://tyssa.co/
バーボフカお問合せメール:contact@babovka.com
今年もやってきました、イースター。我が家は去年と同じスケジュール、去年と同じ友人の別荘にお邪魔しました。北チェコのイェゼルスケー・ホリと呼ばれる地域でかつてガラスの生産地としても知られた地方。子供たちも再会をとても楽しみにイースター2023年スタートです。この日は聖週間の金曜日。子供たちは鞭を片手に村を練り歩き卵(とお菓子)をもらう月曜日を楽しみにしていますが、それまでにはいろいろな準備が待っています。
日が明けて土曜日。まずは鞭作り。昨年は川縁を歩いて柳などの細枝を探しましたが、今回近くの丘の頂上に枝を用意したワークショップがあるということで、子供たちと森を抜けて古い展望台のある丘の上に向かいます。
ちなみに森の途中では、こんな小人の家に遭遇することがあります。
ありました!小枝の鞭のワークショップ。各人思い思いに材料をもらい、子供たちのために鞭を編んでいます。
丘の上まで3kmぐらい歩いたでしょうか。鞭もできたしほっと一息。休憩がてらの一杯。あちこちですでに祭りモードになった人々が楽しい時間を過ごしています。
私も頂いた材料で挑戦。バーボフか息子のため少し短めに仕上げました。
2日目。日曜日はまた近くの山に散策に。山にはイェドロヴァーという川があり山の上方には大きな滝もあります。かなりの急斜面、所々に巨石が転がりかなりの迫力です。
バーボフカ・ボーイズも滝目指して息を切らしつつどんどん上に進みます。
そして到着。雪解け水が川に合流し、囂々と大きな音を立てて流れています。爽やかな空気を澄んだ水の飛沫が、熱った頬に清々しく感じられます。昔はこの川の水力でガラス製品の研磨が行われていて、村の古い建物には引かれた水を利用した水車が回っていた跡を見ることができます。バーボフカでご紹介している古いネックレスの手作業による研磨が施されたビーズも、こちらの村で作られていたものがたくさんあると思います。
散策から帰ってた後は明日の本番、卵の用意です。もらうだけではなく差し上げるための卵です。:)食紅で子供たちが色付けし、真剣な表情で思い思いにシールをぺたぺた・・・。
よく見ると卵ではないものも!!(子供たちは冗談でトマトを一つ紛れ込ませてくすくすと悪戯っぽく笑っていました。:))
夕飯は私が作った巻き寿司。食にはなかなか保守的なチェコの子供たち、食べてくれるかしらと少し心配でしたが、
一番小さな娘さんも美味しいと食べてくれ、ホッと安心です。
そして、待ちに待った月曜日の朝!とても楽しみにしていたのでこの笑顔!
去年は歌えず大人が代わりに歌っていたおしりぺんぺん時のイースターのお歌も今年は子供たちだけで歌います。
一年ぶりー!!とバーボフカ息子を歓迎してくれる近所の優しいお姉さん。
なんと今年は小さな子もちょっと大きな男の子たちも、本当にたくさんに子たちが村中に繰り出してとても賑やか。大変嬉しいことです。
廃れそうになっていたチェコの伝統を(去年は私たちの他にほとんど誰も見かけませんでした。)去年私たちがみんなに思い出させたのかもしれないわねと友人と笑って話をしました。
我らが別荘にもたくさんの子供たちが立ち寄ってくれました。息子たちが用意した卵も全て貰ってもらえて大成功。
私の作ったおにぎりもこんな可愛い子が美味しいと言ってくれて、私にとっても大成功のイースターになりました。この時間はチェコ田舎ならではのもの。チェコでのご縁、友人に改めて感謝のイースターにもなりました。
また去年と同じようにチェコのおじいちゃんにスキーに誘っていただき、北チェコ地方のクリコノシェ山脈に出かけました。プラハは最近かなり暖かくなっていますが、山岳地帯は3月いっぱいまで雪があるそうで、スキーや雪遊びには十分の雪があって息子は大喜び。到着してすぐスキーと思いきや、大きいお兄ちゃんたちは学校に行かない分その日の宿題をこなさなくてはいけませんから、リビングで宿題をしていて遊び相手にはなってもらえません。
お勉強難しそうだなーと他人事のように眺めるバーボフカ息子。
外は360度、山盛りの雪です。とりあえず楽しみにしていた雪合戦&雪だるま作り。お日様が当たると雪だるまが溶けてしまいそうで、思わず「ぎゅー」
次の日は素晴らしい晴天に恵まれ、2kmほど先にある展望台にあるいて向かいました。傾斜になった斜面をテクテク歩いていくのですが、傾斜になっているためソリを持参して帰りはソリで一気に滑り降りるという計画です。
一時間ちょっとで展望台のある丘の上まで到着しました。ジャリーという展望台で1892年に建てられた石造の塔です。息子はもう滑り降りる気満々ですが、せっかくですのでクリコノシェのパノラマビューを楽しまないと残念なお天気、上まで登ってみることにしました。ちなみに塔の高さは18mあります。
中は漆喰と木の梁と螺旋階段。
快晴でとても遠くまで見ることができました。空気も清々しくとても気持ちよかったです。
ついでに隣の山小屋で一休み。こちらは従兄弟たち。ヤンチャ3人組。
あとはこの坂道を息子と二人で一つのソリに乗って、思いっきりスピードを上げて駆け降りるだけです!
次の日からはおじいちゃんのスキー教室が待っていました。第3日目も快晴です。去年に比べ、進むのも転ぶのも起き上がるのも、ずっと上手になった息子に私は外野で目を細めるのでした。
今日、うちの息子の幼稚園ではカーニバルがありました。チェコでは「マソプスト」というカーニバルで、伝統的に行われる季節の催事です。
4月のイースターまでの間、肉食を断つ時期があるのですが、その前にガッツリお肉を食べてお祝いしましょうみたいな感じの楽しいお祭りで、チェコ中の街や村で開催されます。
そのお祭りでは大人も子供も思い思いの仮装して地域を練り歩くのですが、その仮装は厄除けと共にヒエラルキーを超えた無礼講みたいな意味があるそうです。
うちの息子は、今回本人の希望で日本のお稲荷さんに変身。とにかく全身真っ白がいいということで、私の“うそつき”襦袢と簡易の足袋型靴下を身につけて、かろうじて全身白。
お面は、去年一時帰国の際に大阪の友人に縁日で買っていただいたお稲荷さんのお面。我が家でも日頃厄除けとして活躍してくれているアイテムです。
ここ数年冬は風邪ばかりひいている私ですが、そのおかげでまたまたチェコのハーブにお世話になり良いハーブに出会う機会が多くなりました。当店バーボフカではチェコといえばガラスの国などのイメージが強いかもしれませんが、私は折に触れてチェコはハーブの国だなぁと感じます。(ハーブをたくさん使う国はチェコだけではありませんが。)
最近私の中でお気に入りなハーブは松の針葉を使った飴です。松に針葉には高い抗菌作用があり、飴や松の成分を抽出したシロップがチェコでは昔から、風邪薬や咳止めなどに使われてきました。私が愛用しているこの飴は舐めると松脂の強い風味がします。しばらくすると喉のイガイガや咳がスーッと退いていく即効性が感じられます。
ちなみに松はチェコ語でBorovice(ボロヴィツェ)と言います。
そのほかにも、風邪をひいたらカモミールティーを飲んだり、エルダーフラワーのお茶を飲んだり、またイバラの実やシーバックソーンのお茶でビタミンCを補給したり、チェコの昔からのハーブの知恵をお借りして対処しています。チェコには日本の皆さんにもおすすめしたいハーブがたくさんあります。